認知症の診断・治療(アルツハイマー病など)
認知症とは
さまざまな原因により脳が機能障害を起こすことで、日常生活に深刻な支障をきたす病気です。
記憶障害・失語・機能障害など症状により分類もさまざまで定義も異なります。
ご本人の病識がないことが特徴的な病です。
どんな病気なの?
「あれ?物忘れが多いな?」という経験をされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしこの“物忘れ”も加齢による心配のない程度のものと、「認知症」として早期に治療開始すべき必要があるものとに分かれます。
例えば、単純な物忘れは生理的な脳の老化が原因で、多くの場合はヒントがあればすぐさま思い出すことが可能です。ご本人にその自覚があり、日常生活に影響を与えることはほとんどありません。
一方の認知症は、脳機能を急激に失っていくことで日常生活や社会生活を今まで通り営むことすら困難な状況を招く病気です。自覚症状がないことがポイントです。
診察の現場から思う認知症の「早期発見・早期治療」のために大切にすべきこと
認知症治療は、なによりも早期発見・早期治療が重要な鍵を握ります。
半年一年放置することで深刻な状況に陥ることもあるほど進行しやすい病です。
特に認知症はご本人の病識がありませんから、ご家族や職場の同僚の方などからのご相談をお受けするケースが圧倒的に多いです。それゆえ診察にお越しいただくまでに、思い悩まれ躊躇されたり敬遠される方が多いのもまた現実です。
また、ご本人にとっても「認知症の診断を受ける」ということ自体がどうしても『恥ずかしい』という思いや、抵抗感で状況を正しく捉えられないことも現実です。
特にご家族や自分の親御さんの状態を心配されている方などは、尊敬すべき親御さんに対して「物忘れがひどい」と指摘して治療を受けるよう説得するなど、とても勇気が必要なことだと思います。
しかしそれは適切な受診を遅れさせている最大の要因でもあります。
まずはそこを乗り越えていただくことが、認知症治療の最初のハードルだと感じています。
大切なご家族のデリケートな問題であるからこそ、私たちスタッフも真摯に治療に取り組みたいと日々感じています。
大切なご家族に異変を感じる時こそ、ぜひ一度立ち止まって大切に考えていただきたい病気です。
敷居を高く感じることなく、ぜひお気軽に一度診察にお越しください。
どんな診察や検査が必要ですか?
まずは問診に合わせていくつかの簡単な質問項目をいたします。
加えてMRIを利用し精密な画像診断を行います。
脳の萎縮や脳梗塞などのチェックをくまなく行い、総合的に判断いたします。
診断結果は1~2回ほど診察にお越しいただければ、ある程度の方向性を定めることができます。
どんな治療をするの?
現在の認知症の治療については、使用できる薬というものがある程度限られています。現代の医学では薬物療法のみで認知症を完全に治すことは不可能と言われており、完全な予防をすることも難しい状況です。しかし認知症についての研究は日々進化しており、新しいアプローチも模索されています。
当院での認知症治療の方針
当院では認知症治療において特に大切にしていることは「非薬物療法」です。
薬物治療による効果は3割程度と捉えていただき、非薬物療法で得られる効果を7割として考えます。
認知症の方によくみられる傾向として、ご自宅にこもりがちなケースが多いです。
外の世界に積極的に出かけていく機会を失ってしまっている現状があります。
例えばご近所の老人会やコミュニティへの参加、デイサービスの利用など何かしらご自身が外に広がる世界とつながることは認知症治療では非常に有効です。
私たちが繰り返し患者様にお伝えしていることでもありますが、「話すこと」「読むこと」「書くこと」「くよくよしないこと」は認知症治療にとってどれも重要です。
ぜひ前向きに認知症と向き合って、たくさんのことにチャレンジしてみてください。
患者様を取り巻く環境を大きく捉えながら、私たちも診察・治療に取り組んでまいります。
認知症治療にご協力いただくご家族の皆様へ
大切な身近な方が認知症と診断されたご家族の心中は、正直毎日不安な気持ちで一杯のことと思います。
ご家族の方の悩みの声で特に多くいただくものは、徘徊や怒りっぽさや夜中になかなか寝付けなかったりすることです。
日常的に生活を共にすることでご家族の方も疲労困憊なことでしょう。
そんなお悩みにも親身になって幅広く対応・解決して参りたいと願っています。
ご家族の声もぜひ私たちにお届けください。
ご家族のお悩みは患者様ご本人と同じく丁寧なケアをする必要があると感じています。
一般的に認知症は進行しやすいものとは言われていますが、治療を受けていらっしゃる当院の患者様の中には劇的な回復をされた方も多くいらっしゃいます。
患者様にとっても、外での活動は高い効果を生み出す可能性を持っています。
また、認知症の方は食欲が落ちることも多いです。
薬の組み合わせの良し悪しにより食欲が劇的に回復することもよくあります。
点滴ばかりしていた人がしっかり食べられるようになったというケースも診療の現場ではよくあることです。
薬の組み合わせなどは特に専門的な観点が必要となりますから、患者様の気になる変化やお気づきになったこと、質問などもぜひお気軽に私たちにお伝えいただければと思います。